


Nさんの住まいは森のように緑豊かな公園のそばにあり、都心とは思えないほど自然に恵まれている。以前は賃貸マンションに住んでいたが、新しく駐車場が必要になって住み替えを検討。植物を育てるのが好きなので、同じ住むのなら、自分好みにデザインされた庭付き一戸建てがいいと、約17坪の敷地を購入した。
細長い敷地には5年前の完成時に植えられたモミジやラベンダーが茂る前庭があり、張り出した2階デッキが地面に近づくよう、1階部分は半分ほど地下に埋められている。屋上は鉢植えが並ぶ空中庭園になっていて、周囲に比べると建物全体の大きさも控えめだ。
建築家の西久保毅人さんは、「ひとり住まいということもありますが、あえて敷地の余白を大きく取り、小さく建てました。建ぺい率いっぱいに建てないと損、と考える人もいるけれど、前庭は鳥が遊びに来るポケットパークになっていて、経済効率とは別の意味での豊かさがある。広くはないけれど、天井の高さや色づかいで変化をつけ、様々なシーンが楽しめる空間を考えました。屋上へは玄関の奥にある外階段を使う動線だし、半地下には隠れ家のような浴室もありますよ」。そう話してくれた。

A ロフトと一体になったLDKは天井が高く、のびやかな気分になれる。「植物も居心地がいいのか、すくすく育つんですよ」とNさん
B 前庭のカエデ越しに2階LDKを見る。「近くに森があるせいか、鳥がよく遊びに来ますね。木の枝にヘビがいて驚いたこともあります」とNさん
C 緑に包まれた外観。建物を後退させて駐車場と前庭を設け、ゆったりとした印象に。道路との距離が保たれているので、プライバシーも守られる
D ビー玉が埋め込まれた踏み石。さりげない遊び心が訪れる人を喜ばせる
E 庭側に張り出した2階デッキ。「人が暮らす空間は、できるだけ土に近い場所に」というのが建築家の西久保さんの考え。そのため、1階を半地下にして2階LDKの床レベルを地面に近づけている。枕木を敷いた前庭のカエデや草花は、建主自身が植えたもの

玄関の左側はLDK。正面のドアを出ると屋上への外階段が現れる


A 「キッチンは便利で機能的なステンレス製よりも、温もりのあるホウロウのシンクを選びました」とNさん。カウンターは色むらがいい味わいを出しているモザイクタイル貼りに。ここから上階を歩く猫が見える
B キッチンのガスコンロや食洗機もネットで安く手に入れた
C 愛猫のピーちゃん。もう1匹のジュジュは姿を見せず。天井にはロフトと行き来できる猫用開口部がある
当初の建物の予算は1600万円程度。その頃のNさんは仕事で多忙を極めていたこともあり、「植物が育てられて、のんびりくつろげる家」がテーマ。アメリカに7年間滞在した経験から、希望する暮らしのイメージも明確だった。
「暮らしていて気持ちが豊かになる楽しい家にしたかったんです。私は機能的でムダがない便利な家よりも、ゆったりとして居心地がいい空間で過ごすほうが好き。だから、キャンドルをともしてリラックスできるバスルームや、たくさんの鉢植えを置ける屋上、それにお気に入りの小物を自由に飾れる壁一面の本棚をお願いしました」
もともと庭づくりや簡単なDⅠYなら自分でやってしまうNさんは、家づくりでもその行動力を発揮。デザインに優れた外国製の設備機器を安く入手するために、世界中のサイトから探した商品をネットで購入し、かなりの金額のコストダウンに成功している。
「大空が見える屋上で、草花の手入れをしていると気持ちが穏やかになるし、日なたぼっこしながら猫と遊ぶのも楽しい」。そう笑うNさんは、どうやら心から満足できる家を手に入れたようだ。

D&E&F. こぢんまりとして、包み込まれるように居心地のいいロフト。階下のキッチンに光を届けるため、ロフトの床の2か所に透明のアクリル板を敷いた。上下フロアが視覚的につながり、普段は見られないアングルから猫の思わぬ表情やしぐさも楽しめる G. デッキでは、風に揺れる葉や木漏れ日が自然の息吹を伝えてくれる。袖壁があるので隣家からも見えない H. ソファ側の壁は観葉植物と同色のライムグリーンに塗り、元気が出る空間に仕上げた。お気に入りのアートも心を和ませる I. 近くの公園の緑が一望できる屋上庭園。「草花の手入れをしていると落ち着く」というNさんの楽園 J. お姫様気分で眠れそうな1階寝室。壁は基礎を兼ねたコンクリート打ち放しだが、床暖房が入っているので快適 K. 浴槽の脇の引き戸を開けると坪庭のある露天風呂に変わるバスルーム。「半地下で外から見えないのに、光と風が入って気持ちいい」。坪庭は自作 L. 日当たり最高の屋上には、ハーブやウリなど様々な鉢植えが並ぶ。ここで友人とバーベキューをすることも