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小さなカフェも実現した夫婦の楽しみがいっぱいの家

生活空間と趣味空間は完全にセパレート

扉を開けるとガソリンとオイルの匂いが、つんと鼻先をかすめる。冷え冷えとした蛍光灯に照らし出されるのは、オートバイ乗りに絶大な人気を誇るカワサキのZが3台。新車のように磨き抜かれているが、どれも’70年代のバイクだ。
「家を建てたのは、オートバイを収納するガレージが欲しかったから。これに尽きます」と建主のKさんは言う。昨年の12月に新築した家は、オートバイと同じで新築のようにきれいに保たれている。ここに夫婦と子どもひとりの3人で暮らす。Kさんの家で特徴的なのは、ガレージが欲しくて家を建てたというわりには、1階のガレージが2階の生活空間とセパレートされていること。一般に「ガレージハウス」を建てるとなると、生活空間とガレージを近接させて、愛車を眺めながら日常を過ごせるよう、要望する人が多い。しかし、Kさんはそうしなかった。「中途半端がイヤ。趣味の時間は趣味に没頭していたい。だからLDKが見えるなんて論外」(夫)。
建築家との家づくりで大切にしたのは、オートバイと同じく「年月を経て価値が高まる」こと。「古いオートバイを修理する経験で学んだ」と夫が言う家づくりのテーマとは何だったのだろうか。

左/玄関側のクロゼットには同じタイプの革ジャケットがずらりと並ぶ
右/机は夫が小学生の頃から使い続けているもの。「書斎はこの机が入るように空間を確保してもらいました」(夫)。空間の基調色も机の色に合わせてあり、あつらえたようにきれいに収まっている

ガレージと書斎は夫の城。オートバイやフライトジャケットなど、お気に入りのもの以外は一切置かない。現在単身赴任中の夫は金曜の晩にここに帰ってきて、しばらくの間、ひとりきりの時間を過ごす

上/オープンなクルマ用ガレージとは対照的に、オートバイのガレージは存在すら分からない。視線をコントロールしつつ、光と通風を確保する

基本をしっかりつくって年を経て価値を増す家に

「僕のZはネジ一本から完璧に整備して、交換のきく部品は簡単に取り換えられるように改良してあります。これで、トラブルにも簡単に対処できるようになりました。実は家も同じで、基本をシンプルにしっかりつくって、消耗品は交換できるようにしておくべきだと思います」(夫)。シンプルという言葉のとおり、Kさんの家は1階が玄関にガレージ、書斎。2階はロフト付きのLDKと寝室という間取りで、子ども室はない。「個室が必要な短い期間のために、家の骨格を狂わすことはない」というのがKさんの考えだ。また、消耗品とされる水回り設備は、ユニットバスやシステムキッチンなど、ことごとく交換可能なもので固めている。これについて、設計を担当した佐々木善樹さんの話。「家のあるべき姿は、年月を経て新しい価値が生まれること、基本をしっかりつくればときどきに合わせて居心地いい場所が生まれるというのが持論です。あとは、時を経て味わいが増すように、素材には気を使いました」
ガレージに格納されるZが放ついぶし銀の魅力。それを育てたKさんによって、この家も数十年後には、使い込まれて同じような魅力を放つ家になるのだろう。

左/古いバイクなので、ガレージで眺めるだけかと思いきや、毎週必ず乗っているのだそう。ハーレーに乗る妻とふたりでツーリングに出かけることも。「長男の手がかかるうちはしばらくおあずけですけどね」(妻)
右/子どもに触らせないのではなく、教えながら一緒に整備する姿が印象的だった

A LDKから1段上がったところは図書コーナー。床を上げて段差を利用した収納を設けている。不意の来客の目から隠したいものは、すべてのみ込む大容量だ
B 2階のLDKはロフトまでの高さが頭上に広がる気持ちのいい空間。北側斜線を避けるための傾斜天井も空間に特徴を加えるアクセントになっている。塗装仕上げの壁と床は、建主が容易にカスタマイズできるようにという建築家の配慮だ
C 3人家族には必要十分な大きさのシンプルなオリジナルキッチン。ガスレンジなどの設備機器は簡単に交換できるように考えられている
DE 来客は、玄関を入ったら階段を上って2階へ向かうため、横にオートバイのガレージがあるとは気づかない。オートバイのガレージはそれくらい日常生活と切り離して考えられている。「ガレージは整備の場ですから、それが当たり前でしょ」(夫)
FG 図書コーナーの両脇にはロフトスペースが用意される。「将来子どもが個室を欲しがったら、そのときは寝室を子どもに渡して、夫婦でここを寝室にしてもいいと思っているんです」(妻)

data
  • 敷地面積/103.00㎡(31.21坪)
  • 延床面積/115.75㎡(35.08坪)
  • 1階/59.24㎡(17.95坪)
  • 2階/56.51㎡(17.12坪)
  • 用途地域/第1種中高層住居専用地域
  • 建ぺい率/70%(60%+10%角地緩和)
  • 容積率/200%
  • 構造/木造軸組工法
  • 竣工/2008年12月
  • MATERIAL
  • ●外部仕上げ
  • 屋根/ガルバリウム鋼板縦ハゼ葺き
  • 外壁/窯業系サイディング板
  •    +ガルバリウム鋼板
  • ●内部仕上げ
  • 1階
  • 床/パインフローリング+塗装仕上げ
  • 壁/プラスターボード+塗装
  • 天井/プラスターボード+塗装
  • 2階
  • 床/パインフローリング張り
  • 壁/プラスターボード+塗装
  • 天井/プラスターボード+塗装
  • INSTRUMENTS
  • 厨房機器/オリジナル
  • 衛生機器/TOTO
  • 窓・サッシ/トステム、オリジナル(スチールドア)

  • 設計/佐々木善樹
  • (佐々木善樹建築研究室担当/大川三枝子)
  • 〒103-0011
  • 東京都中央区日本橋大伝馬町3-1
  • TEL:03・3669・1216
  • コーディネート/OZONE
  • 施工/山菱工務店
  • TEL:0422・46・5588

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扶桑社「住まいの設計」2010年2月号
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このページに記載されている記事本文、写真等は扶桑社「住まいの設計」2010年2月号より転載しています。

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