


広島駅から車で20分ほど。高台に広がる落ち着いた雰囲気の住宅地を進んでいくと、白くて平たい箱のような建物が、地面から浮かぶようにある。道路に面した北側は白い壁だけの印象だが、玄関に入ると、いきなり青い海が目に入る。横長の台形のような敷地形状を生かした東西に細長いLDKは、18mもの開口部が広がるワンルームの大空間。瀬戸内海に注ぐ川の河口付近に位置しているため、湾内を行き交う船や大きな橋、対岸の街並み、その向こうの山並みまで見渡すことができる。「この眺めが気に入って手に入れた土地なので、個室はコンパクトでいいので眺望を楽しめるプランをお願いしました」と、Mさん。
設計者の小川晋一さんは、LDKと浴室を海の見える南側に配し、子ども室、和室、寝室といったプライベート空間は北側に集めた。「ロケーションを最大限に生かすために、北側のクローズスペースをコアとした鉄骨構造によるキャンティレバールーフを採用。これにより、柱のない大空間を実現できました」と、小川さん。リビング北側の子ども室は4枚の大きな引き戸で仕切られ、普段はリビングと一体化した空間として利用できるプランとなっている。

A. 18mもの柱のない大開口によりワイドビューを実現したM 邸のLDK。アイランドキッチンのIHコンロも、視界を妨げるレンジフードをなくすために下引き換気扇を採用。海や山を眺めながら料理を楽しめる
B. 真っ白な人造大理石の天板が印象的なキッチンは、大人数で料理が楽しめるようにと大きな真四角のアイランド型に。背面に大容量の収納を造り付け、冷蔵庫も収納の裏に隠してスッキリ見せている
C. 道路に面した北側外観。白い壁面には通風用の小窓が3 か所設けられているが、窓の外側に扉が付けられているため閉めれば外壁と同化する。平屋の建物は道路面より1.5m高く設置され、その下の空間をガレージや倉庫として使用している
D. 西側に広がる住宅地の崖沿いの道路から見たM 邸。小高い丘の上に、中が空洞の白い箱が浮かんでいるように見える
E. 美しい眺望を最大限に楽しめるように、大きなガラス面を設けた南側外観。基礎から水平に鉄骨を張り出しているため、近くで見るとさらに建物が地面から浮かんでいるような印象を受ける

F. 北側の子ども室と和室の間に配された玄関ホール。北側の各室には1 か所ずつ小さな通風窓が設けられており、玄関と小窓を開けると、南から北へと気持ちよく風が流れる
G. 「実は、この眺めも気に入っています」というM さんの視線の先には、西端に配されたバスルームまで一直線に伸びる廊下。敷地の長さが強調され、空間ののびやかさを実感できる
H. リビング北側に配された子ども室は、台形の敷地形状がそのまま表れたユニークなスペース。子どもが大きくなるまでは、引き戸で仕切らずにリビングの一部として使用できる

「港には大きな貨物船が入ってくるので、休みの日は、ぼーっと船を眺めていることも。それだけで癒されます」と話すMさん。海側の眺めが気に入り、せっかくならこの眺めをゆったり楽しめるようにと2区画分の敷地を購入したが、初めてこの家の模型を見たときには、海側の開口部の長さに驚いたという。その外側に設けられたテラスは、全長25mにも及ぶ。「子どもたちは思いっきりダッシュしていますし、友人を招いたときにはテラスでバーベキューをしたり。30人近い大人と子どもが一直線に並んで、海を見ながらスイカを食べたときは楽しかったな」と、このスケール感を存分に楽しんでいる様子。大勢で料理ができるアイランドキッチンからは対岸の山並みの眺めも美しく、リビングのソファに腰を下ろすと河口の牡蠣打ち場や船が残していった白い波の跡が見えたりと、大開口からは様々な表情を楽しめるという。
長い開口部の西端に位置する浴室は、風呂好きの建主が海につかっているような気分を味わえるようにと、浴槽は床に埋め込まれた。「お湯につかると目線の高さが変わり、また違う雰囲気に。夜はライトアップされた橋や工場の灯りもきれいです」(Mさん)

