


広い中庭とそこに面した壁いっぱいの開口部、そして余分な装飾を排したまっ白な壁と天井で構成されるIさんの家。
その白い壁こそが、I邸のホームシアターのスクリーンだ。
日没後、プロジェクターをセットしDVDの映像を投影すると、まっ白な壁にくっきりと映像が映し出される。さっきまでLDや寝室だった場所が、プライベートシアターに変わる瞬間だ。専用のスクリーンに比べると多少解像度は落ちるが、家族や友人たちと楽しむのであれば十分な画質といっていいだろう。
このスタイルのメリットは、映像を映す場所を変えることで様々なシーンで使い分けられるということ。
落ち着いたスペースで映像を楽しみたいのなら、居室の中で一番窓の小さい子ども室がいいだろう。逆にオープンなスペースで、みんなとワイワイやりながら映像を見たいのなら中庭に投影するのが面白い。夫婦2人で寝る前に楽しみたいなら、寝室の壁にも映し出せる。
またプロジェクター以外に、LDには50インチの大画面テレビも設置する。「こんなにいろんな場所で、映像が堪能できるなんて思ってもいませんでした。映画を見るだけでなく、たとえば人を呼んで子どもの運動会ビデオの鑑賞会なんか開いても楽しいかもしれませんね」(夫)
この先、Iさん夫妻はライフスタイルに合ったホームシアターの楽しみ方をどんどん見つけ出していくのだろう。

A. バスコートに面した浴室は、窓を開け放てば露天風呂気分。空を見上げながらバスタブにつかることができる
B. LD と同じように白で統一された洗面室。シンクと一体になった洗面カウンターや鏡張りの収納棚はオリジナルデザイン
C. 玄関ホールに接する中庭には、ブルーベリーやヤマボウシを植えた。シンプルなインテリアを彩るグリーンが、来訪者を出迎える
D. 幅250×奥行き100㎝の大きなアイランドを設置した使い勝手のいいキッチン。
調理器具はもちろん冷蔵庫まで収納扉の奥に隠すことで、オープンキッチンでありながらインテリアの邪魔はしていない。
コンロ横の扉を開けると、勝手口に通じている
E. シンプルな建物に、あえて水屋箪笥など存在感のある家具を置くところにIさん夫妻のセンスが感じられる

中庭に面した高さ4.5mの壁一面はすべて開口部。床と中庭の地面はフラットにつながっており、LDと中庭が一体となった大空間のように感じられる。 「日常使いの第2のシアター」ともいえる50インチの大画面テレビは、造作家具の中にセット。AV 機材を家具の中に隠すことで、すっきりさせた

A. 子ども室は、中庭に面してスリット状の窓が設けられている。両端の開閉できる部分をのぞいて、すべて一枚ガラスとなっている
B. LD と寝室は中庭を通してお互いに視線が行き交う
I邸の特徴は、あちこちの壁をスクリーンにできるほどシンプルなデザイン。Iさん夫妻が建築家の小川晋一さんに設計を依頼したのも、そこに惚れ込んだからだと言う。「私は味のある家具や小物が好きで、それらを家の中に置きたかった。なので建物自体は、むしろ何にでも合うようなインテリアにしたかったんです」(妻)
そうしてできたのが白い壁に囲まれた住まい。壁と天井はすべて塗装で仕上げられている。「クロスだと継ぎ目ができるし、どうしても風合いが出ない。実は床材に合わせて塗料には少しクリーム色が入っているのですが、スクリーンとして使っても気になるほどではありません」(小川さん)
また、住まいとしての快適さをつくり出しているのは、大きな中庭だ。「Iさん夫妻の希望から、外に対して閉じていて中にはオープンな中庭のある家に。壁一面をガラスにすることで、室内と中庭の一体感をつくり出しました。その際に、どうせなら中庭の壁にプロジェクターで投影するのも面白いのではないかと提案したんです」(小川さん)
中庭のある白い建物は、まるでモダンアートの美術館かギャラリーのよう。「“美術館のような家”というのは、まさにイメージどおり。住む人を選ぶ家かもしれませんが、私たちにはぴったり」(妻)
建築家と建主のセンスが合ったからこそ、生まれた住まいなのだといえる。

C. 上下階をつなぐまっ白な螺旋階段は、踏み込むと異世界に迷い込んだかのような錯覚を覚える
D. 2階の子ども室は、ほかの居室に比べてもっとも窓が小さく閉じた空間なので、日がまだ高いうちからプロジェクターを使用可能。
「もっとも子どもが大きくなって本格的にここを使い出したら、無理でしょうけど(笑)」(夫)。
現在はワンルームだが、将来子どもが増えたら間仕切って使う予定だとか
