


日曜のお昼どき。オープンキッ
チンでは、妻がかいがいしくラン
チの支度中。夫は家庭菜園で葉物
やハーブの収穫に余念がない。
30代のKさん夫妻は7歳の息子との3人暮らし。以前は多忙な共働き生活だったが、妻は家の新築を機に、主婦業に専念しようと決断。夫も転職し、ゆとりを増やす道を選択したという。「子どもには小さいうちから添加物のないものを食べさせたい」と妻は語る。
探し回って見つけた敷地は、住宅密集地の奥にあり、表通りの喧噪を感じさせないオアシスのような土地。ここに家族が穏やかな時間を過ごせる家をつくりたいと考えた建築家の林敬一さんは、1&2階とも間仕切り壁のない一室空間を提案。1階のLDKの中心には妻が楽しく料理できる、回遊型のアイランドキッチンを据えた。「だしひとつとるにも手間がかかるし、家事って案外やることが多いんです」と妻。夫の弁当から子どものおやつまで一切をつくり、「見せる収納」に徹した室内を常に整理整頓し、こまめな掃除を心掛ける毎日。白くモダンな室内には、昔ながらの丁寧な暮らしが息づいている。

休日のランチを楽しむKさん一家。敷地は北と東の隣地より一段下がった窪地状で、庭は擁壁に囲まれているため、プライバシーが守られている。天井の四角い穴は 「光井戸」の出口

A. 2階に上がるとまず目につくのが微妙な角度であちこちにかしいだ太い柱状の「光井戸」。全部で5本ある。筒の大きさはみな同じで、内部は空洞だ。構造体として屋根を支える一方、1階に光をもたらし、2階の各コーナーをほどよく仕切る役目も果たす。
B. 階段の手前から2階全体を見渡す。左手は寝室。階下に見えるのは1階の土間。正面奥はインナーテラスで、洗濯物を干したり植物を育てる場となる。
C.2階の東側にあるバスルーム。西側のインナーテラス同様、防水処理を施した洗濯パンのような床の立ち上がりで軽く仕切っただけで、部屋と完全に一体になったオープンなスペース。

東側の庭から見た外観。構造は1階がRC造、2階が木造。大きな開口部を開け放つと、室内と庭が一体になる。左手は雨水タンク。屋根に降った雨水を貯めて庭の水やりに活用している。

キッチンの設計の見どころを問うと、「とにかく奥さんが楽しく料理できるキッチンにしたい、それしか考えてなかったですね」と笑う林さん。とは言いつつ、楽しく作業するためには、いかにストレスなくリズミカルに動け、モノの出し入れがスムーズにできるかが大きなポイント。よく見ると、その辺が実に抜かりなく考えられている。
まずアイランドキッチンは、玄関→冷蔵庫→準備台→シンク→調理台→コンロといった料理の流れに沿って、ぐるりと一周して作業できる配置になっており、カウンター下は収納スペースとして余すところなく活用。また、ダイニングとの間に設けた食器棚兼用の間仕切りカウンターも、配膳台や家電置き場、食後の器を下げる場として重宝しているようだ。さらに、妻が要望して設けたという吊り下げ式のキッチンレールも活躍中。ちなみに、カウンターはアメリカ製の一体型ガスレンジ&オーブンの高さに揃えて91cm にしたそうだが、妻いわく「ちょっと高めのほうがかえって作業しやすいですね」
