

いつかは、と思っていたI家のマイホームづくりが動き始めたのは、友だち夫婦に影響されて住宅展示場を訪ねた時のこと。ローンを組んでも、月々の支払いは家賃とほとんど変わらないことがわかり「じゃあ早い方がいいね」と、二人は夢に向かって踏み出すこととなった。イメージしていたのは、デザインの素敵な家。それを限られた予算の中で実現してくれるところを求めてまず3社にプランを依頼した。「3社とも、提案いただいたデザインはよかったんです。どこがいいかと迷うくらい」とご主人。ただし、広いリビングを床暖房にしたいなどの機能を希望に加えたところ、「高くなりますよ」と2社。「予算内で大丈夫」と言ってくれたのが桜井建築設計で、迷うことなく、こちらにお願いすることになった。
「桜井さんは、アパートを管理していた不動産屋さんからの紹介でした。『しっかりとした家を建てるところがあるよ』って。会ってみると、第一印象もとても良くて、話すほどに誠意を感じました。ここなら安心して任せられる、と思えたことも大きかったですね」とI夫妻。桜井康彦社長は「はじめから『こんな家に住みたい』というお二人のイメージが明確だったので、こちらとしては、それに対する選択肢を用意するという形で、話はとてもスムーズでした」と振り返る。二人が示したキーワードはシンプルとモダン。プランは、この二つに添って練られていった。
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ドアの前の目隠しのコンクリート板は、施主からの提案で実現 | ![]() |
坪庭には常緑のトネリコを植えた大きな鉢を置いている。鉢植えであれば手入れも簡単 |
白いシンプルな空間に焦げ茶の床やアイランドキッチンがアクセントになったリビングルーム。白と焦げ茶は当初から夫妻が決めていたベースカラーで、これに似合うよう明るめのダイニングテーブルと椅子が選ばれた
アイランドキッチンに立つと、大きな窓を目の前に、部屋がぐるりと見渡せる。窓がデザインとなったシンプルな空間に、I夫妻の趣味で一つ一つ吟味された家具が映える
見た目はシンプルに、モダンに。I邸は、この二つをガイドラインに、広いリビング、大きな窓、そしてアイランド型のキッチンといった具体的な希望を組み合わせてできあがった。リビングに入ると、まずその広さとともに、アイランドキッチンの自然なおさまり具合に驚くだろう。まるで家具のように部屋に馴染んでいる。「キッチンに立った時に部屋全体が見渡せるように、そして右からも左からも出入りできるところに配置して、毎日の使いやすさも実現しました」とは桜井康彦社長。さらにキッチンの後ろにある収納棚は、引き戸ですっぽりと隠して、ひと続きの壁のように仕上げられた。「シンプルに暮らしたいからモノはできるだけ隠したい」そう言っていたI夫妻に応えての提案だった。引き戸を開けると、食器のほかに炊飯器などの家電や食材までが収まり、使い勝手の良さが一目でわかる。「急な来客時もすぐに隠せてすごくいい」と奥さまも満足そうに話した。
もうひとつ、自然でいて工夫の効いているスペースといえば、玄関まわりだろう。玄関ドアを開けると、目の前にはオープン階段と坪庭。視線は階段のステップの間を抜けて、そのまま窓の向こうの緑へ。なんという開放感。「玄関はもっとも人目にさらされる場所。ここを広々と見せられると、空間の印象がまったく違います」と、社長はこの間取りへのこだわりを語った。
さて、実は、このI邸、桜井建築設計が得意とする外断熱二重通気工法で建てられている。「予算内で外断熱にできるから、と勧めていただいたので」と奥さま。一般に、外断熱は内断熱に比べてコストが高く、I邸のようにまるで無料オプションのように取り入れられるものではない。これは、外断熱の家を多く手がけ、部材をリーズナブルに購入できる、そして施工に慣れている同社だからこそ、だ。「同じ予算だったら外断熱の家の方が快適ですからね」と社長はさらりと言った。外断熱にしたことで、少ないエネルギーで部屋は温まり、いったん温まったら冷めにくい、おまけに屋根裏の空間も手にできて、こちらはふだん使わない大物の収納スペースになった。思ってもみなかった贈り物に、I夫妻は満足を口にした。
手すりの形、システムキッチンの機種、色の組み合わせなど一つ一つの希望に対して、納得の提案や選択肢を用意してくれたこと、そうして選んだものたちが間違いがなかったことを改めて感じているというI夫妻。二人の間に流れる穏やかな空気と、心地よい空間が重なった。
| 上/階段側から玄関を眺めたところ。玄関左手は靴などの収納スペースに 下/玄関脇に設けられたニッチは飾り棚として使用 | 玄関を開けると目の前に階段、その先の坪庭まで一気に視線が抜ける | 1階のリビングの隣りには琉球畳を敷いた和室。右手の地窓は、階段裏の坪庭とつながっている |
| 2階のベッドルームも2面に開口部が設けられている。ヘッド側の壁は横長に切り取って心地よい目覚めを約束。掃出し窓の外はベランダになっている | 洗面台を宙に浮かせてすっきりとさせた脱衣所。バスルームからは階段裏の坪庭が眺められる | 外断熱工法で建てた場合に「おまけ」として必ず生じる屋根裏空間。床を張って収納スペースに |
■設計・施工
(有)桜井建築設計
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