


最近、一冊の本のなかに必要なものが全て揃った「遺言書」の作成キットがヒット商品になっているそうです。自分の遺言書を作成するためだけでなく、子どもが親へのプレゼント用に購入するケースも多いようで、何となく暗くて話題にするのがためらわれた「遺言」のイメージが、身近なものに変わってきたのだなと感じます。
持ち家志向の強い日本では財産の大半が自宅不動産であることも多く、相続が発生した時に、遺された家族の間で思わぬトラブルが起こる場合があります。相続なんて「そんなに財産がないから関係ない」、「うちの家族は仲が良いから大丈夫」と思っている方も多いでしょうが、実際は「まさかうちがこんなことになるとは・・・」というケースが多いのです。
リタイアメントプランの締めくくりとして、後に遺す家族のために争いの種は取り除いておくのが思いやりです。そこで、今回と次回の2回に分けて、死後に家族が争うことのないよう、知っておきたい知識として、相続・遺言についてお話したいと思います。
相続とは、人の死亡により、その人に属した財産などの権利・義務を、親族などが承継することをいいます。遺言書がある場合は、亡くなった人の意思として遺言書の内容が最優先され、原則としてそのとおりに執行されます。問題になるのは遺言書がない場合や、あっても財産について具体的な記述がない場合です。
遺言書がない場合には、相続人全員で「遺産分割協議」をし、「遺産分割協議書」を作成します。民法では、相続人の範囲(法定相続人)、相続できる財産の割合(法定相続割合)についても規定されています。遺言書がない場合には、原則として民法の規定に従った分割をすることになります。
民法で相続権を認められた人を法定相続人といい、遺言がない場合、亡くなった人(被相続人)の財産を相続できるのは、原則として配偶者と一定範囲の血族です。
配偶者は常に法定相続人となりますが、血族は親族関係により相続人となれる人が異なります。血族相続人は、上位の順位者がいる場合には、下位の順位者は相続人となれません。
| 配偶者相続人 | 血族相続人 | |
|---|---|---|
| 正式な婚姻関係にある、妻または夫は、 常に相続権があります |
第1順位 | 子 |
| 第2順位 | 直系尊属(父母・祖父母) | |
| 第3順位 | 兄弟姉妹 | |
※被相続人が亡くなる前に血族相続人が死亡していた場合、その子(つまり孫や甥・姪)がかわりに相続人となります
(代襲相続)。
相続人の組み合わせによって法定相続割合が変わります。
血族相続人の順位が低いほど配偶者の相続割合が多くなります。
| 相続人の組み合わせ | 法定相続割合 | |
|---|---|---|
| 配偶者 と 子 | 配偶者 1/2 | 子 1/2 |
| 配偶者 と 直系尊属 | 配偶者 2/3 | 直系尊属 1/3 |
| 配偶者 と 兄弟姉妹 | 配偶者 3/4 | 兄弟姉妹 1/4 |
①配偶者と第1順位の子が相続人の場合
例)相続財産が1,000万円で、法定相続人は配偶者と子2人
財産のうち、配偶者が1/2の500万円、残り500万円を2人の子が均等に相続します。
第1順位の血族相続人である子がいるので、父母・兄弟姉妹には、相続分はありません。
②子のいない夫婦の一方が亡くなった場合
例)相続財産が900万円で、法定相続人は配偶者と父・母の場合
財産のうち、配偶者が2/3の600万円、残り300万円を第2順位の父・母が均等に相続します。
簡単な例をあげましたが、実際のケースでは、きっちりと法定割合どおりに分割することは困難ですよね。また長年にわたり被相続人を介護した、生前に多額の援助を受けていたなど、同列の相続人のなかでも酌むべき事情がある場合も多いと思います。
したがって、遺産分割協議で全員の意見が一致すれば、法定相続割合と異なる分割をしても問題はありません。協議で話がまとまらない場合は、家庭裁判所で調停や審判を受けることになります。
父親の相続財産が評価額2,000万円の自宅不動産のみ、配偶者なし、子2人という設定です。父親が亡くなり、同居の長男Aと別居の次男Bが、法定相続割合に基づいて遺産分割をしたとします。A・Bが不動産の所有権を1/2ずつ相続することになりますが、次男Bが不動産を処分して現金化したいと主張した場合、長男Aはどうなってしまうでしょう。長男Aは、手持ちの現金がなくBの持ち分を買い取ることができない場合には自宅を処分しなければならず、家族を含め生活の基盤を失ってしまいます。
その他にも、
・相続人がたくさんいる
・相続人と付き合いがない、音信不通だ
・相続分を多く(少なく)したい相続人がいる
・承継していくべき家業がある
・法定相続人以外に、財産を遺したい(生前に世話になった人や愛人など)
このような場合などは、トラブルになりやすいので注意が必要です。
遺言書があれば、上記のようなケースでのトラブルを回避できることが多いのです。 今回の例をもとに、次回は遺言書の効果を見ていきたいと思います。
次回は、「遺言書を作ろう~【相続】を【争族】にしないために 遺言の基礎知識~」をテーマにお話ししたいと思います。
2010年9月
遺言書を作ろう~【相続】を【争族】にしないために 相続の基礎知識~
2010年8月
豊かな老後のために~リバースモーゲージ~
2010年7月
ライフプランを考えよう~老後にまつわるお金の話~
2010年6月
ライフプランを考えよう~子育てにまつわるお金の話~
2010年5月
読者の皆様へ~ホームページへ寄せられたご相談にお答えします~
2010年4月
住宅税制どう変わる?~平成22年度税制改正~
2010年3月
意外と知られていない確定申告のポイント~その2 確定申告をやってみよう!~
2010年2月
意外と知られていない確定申告のポイント~その1 源泉徴収票をもっと知ろう~
2010年1月
離婚時の財産分与の注意点~財産分与と税金~
2009年12月
贈与税の配偶者控除~上手に活用して節税する方法~
2009年11月
マイホームの買換え~譲渡益が発生する場合~
2009年10月
マイホームの買換え~譲渡損失が発生する場合~
2009年9月
今が買い時?~税制からみたタイミング その2~
2009年8月
今が買い時?~税制からみたタイミング その1~
2009年7月
住宅購入のワンポイントアドバイス~あなたは持ち家派?賃貸派?~
2009年6月
住宅購入のワンポイントアドバイス~あなたは一戸建て派?マンション派?~
2009年5月
住宅ローンを組んでいる場合の家計のやりくり~保険の見直し~
2009年4月
住宅ローンを組んでいる場合の家計のやりくり~繰り上げ返済~
2009年3月
住宅ローンを組んでいる場合の家計のやりくり