


前回までは、新たにマイホームを購入する場合の税制について見てきましたが、古いマイホームを売却する場合には、古いマイホームの売却についての税金も考える必要がでてきます。
そこで今回は、いただいたご相談をもとに、マイホームを売却して新しく買換えた場合の、売却したマイホームにかかわる税金についてお話したいと思います。
● 今回の相談事例(愛知県 39歳 Oさんよりのご相談)
今年8月に、平成11年に3500万円で購入したマンションを1800万円で売却し、住宅ローン3000万円(30年返済)を組んで新たに4000万円の一戸建てを購入しました。売却したマンションには、ローンが2000万円残っていました。私の給与所得は毎年約400万円(年収570万円)で、共働きで扶養家族はいません。また、古いマンションの譲渡費用として、150万円を支払っています。
そこで質問なのですが、マイホームの売却により損した場合、どうなるのでしょうか?また新たなマイホームについて、住宅ローン控除を受けることはできますか?
まずマイホームを売却した際の基本的な計算方法を確認しておきましょう。

この計算された譲渡所得がプラスの場合は譲渡益、マイナスの場合は譲渡損失となり、マイホームの売却に際して適用できる特例が変わってきます。
今回の相談事例では上記の計算式にあてはめた場合、

となり、譲渡所得がマイナスで、譲渡損失が発生します。
不動産価格が右肩上がりだった昔と違って、現在不動産を売却される場合は、譲渡損失が出るケースも多いでしょう。
このような譲渡損失が発生する場合に、適用を検討できる優遇税制は、「居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除」です。以下でその制度の内容、適用要件、計算方法を確認していきましょう。
(1) 制度の内容
一定のマイホームを売却した場合、発生した譲渡損失の金額を給与所得などの他の所得と損益通算(マイナスとプラスを合算すること)し、この通算により所得税や住民税を軽減することができる制度です。さらに、通算してもなお所得から控除し切れなかった損失がある場合は、翌年以降3年間繰り越して給与所得などから控除します。つまり譲渡した年を含めて最長で4年間の所得税と住民税を軽くすることができます。
(2) 適用要件
この制度では、居住用財産の買換え特例と、売却のみの場合でも適用できる特例の2つのタイプがあり、要件や控除できる譲渡損失の額が異なります。
● 居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除
| 買換え等の場合 (措法41の5の2) |
売却のみの場合 (措法41の5) |
|||
|---|---|---|---|---|
| 売却する住宅 | 売却時期 | 平成21年12月31日までの売却であること | ||
| 居住期間 | 売却する年の1月1日で所有期間5年を超えていること | |||
| 売却先 | 親族等以外への売却であること | |||
| 借入金 | 不要 | 返済期間10年以上のローンが必要 | ||
| 買換える住宅 | 取得・居住時期 | 売却した年の翌年末までに取得、さらにその翌年末までに居住すること | 不要 | |
| 面積制限 | 居住用部分の床面積が50m²以上 | |||
| 借入金 | 返済期間10年以上のローンが必要 | |||
| 本人の所得 | 合計所得金額が3000万円以下の年のみ適用可 | |||
| 損益通算できる額 | 譲渡損失の額 | 譲渡損失の額と、(住宅ローン残高-売却価格)の少ないほう | ||
| 繰越控除 | 損益通算してもなお控除しきれなかった金額 | |||
今回の場合ですと、どちらの特例の要件もみたしていますが、買換え特例では、譲渡損失1500万円全てが損益通算の対象となり、損益通算しきれない金額は、翌年以降に繰越して控除することができます。一方、売却のみの特例を適用した場合には、売却するマイホームに残った住宅ローンが2000万円、売却価格が1800万円ですので、2000万円-1800万円=200万円が損益通算の限度額となり、買換え特例を利用するのが有利となります。
なお、他のマイホームにかかわる優遇税制(3000万円特別控除など)とこの制度は併用できませんが、買換えたマイホームについて住宅ローン控除を適用することは可能です。 また、特例の適用には、確定申告が必要です。
(3) 譲渡損失と繰越控除の計算例
今回の相談事例を例に、損益通算と繰越控除の計算方法を下図にまとめました。
買換えた年から繰越2年目までは、給与所得400万円と譲渡損失が通算されて所得税と住民税が毎年ゼロになります。3年目は400万円の給与所得から繰り越した300万円の損失を控除すると100万円の所得が発生しますが、そこからさらに住宅ローン控除を適用することができます。

給与所得400万円の今回のケースですと、所得税と住民税合わせて年間約50万円の税金が発生するので、それがゼロになるのは大きいですよね。今回の相談事例の方であれば、4年間で約200万円の節税になります。
住宅の優遇税制は今までのコラムでも見てきたとおり、その多くに「~年まで」という期限がついています。その中で優遇税制を最大限に活用できる年は平成21年と言われています。今回お伝えした居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例は、まず売却を平成21年中に行わなければ適用できません。近々マイホームの買換えを考えている方は、マイホームの売却・購入・居住のタイミングが重要なポイントになりますので注意してください。上手に節税して、希望に叶うマイホームづくりの資金にまわしましょう。
どうせ損なんだから、申告する必要はないと思われている方もいるかもしれませんが、今回の例のように数百万円の節税ができる場合もありますので、判断に迷った時は、ぜひ税理士等の専門家にご相談ください。
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