この連載では毎回、「ハウスサーカディアン(体内時計が安定する住まいづくり)」についてお話をしてまいりました。体内時計を安定させるために、住まいにどのように朝日を有効的に取り入れるか。また、その間取りづくりに関して、いろいろとお話をしてまいりましたが、プロフィールにありますように、私、小池康壽の本業は「家相研究家」です。
私は、もともとは住宅のトップセールスとして、数多くの住まいづくりのお手伝いをさせていただきました。
その際、家相を気にされる多くの施主の方々と出会ったことが、私が家相を研究するきっかけとなったのです。
みなさんもご存知でしょうが、家相では「鬼門」といわれる方角を忌み嫌い、北東の鬼門や南西の裏鬼門に、トイレやお風呂、台所などの水回りや玄関をつくることを凶としています。「よくない」と言われれば、やはり避けたくなるのが人情ですが、玄関や水回りをすべて、鬼門にかからないように配置しようと思うと、家づくりはできなくなってしまいます。また、占い師などに家相を見てもらい、その指示どおりに建てたにもかかわらず、病気や事故などの災いに遭ってしまうことも現実に少なくありません。
家相には、理にかなう先人の教えもありますが、家づくりには不要な迷信も多くあります。私は家相研究家として、この迷信を排除することで、住み心地のよい、真の「よい住まい」を多くの方につくっていただきたいと活動してまいりました。
私自身も、今までに9回、住まいを建てたり、購入したりしています。鬼門に玄関を設けたり、あえて鬼門にトイレや台所をつくったりと、実体験もしてまいりました。日本で初めて家相のサイトを立ち上げ、以来、20000棟を超える間取りも拝見してきました。家相が「統計学」と言われるなら、自身の経験も含め多くの家づくりを見てきた私が、新たな統計を取ることで、迷信もきっぱり否定できると自負しています。
そんな、きっぱりと否定できる迷信のひとつが、これからお話をさせていただく一例です。
そしてこれは、私が推進している「ハウスサーカディアン」に、もっとも反する住まいの例ともいえるでしょう。
「東南に玄関をつくると主人や子供が出世する」、「東南に玄関がある家は繁栄する」などという言葉を聞かれたことはありませんか。これは、昔から家相ではよく言われていることで、この言葉を信じて、あえて東南に玄関を配置している住まいを、鑑定の際にもよく拝見します。子供が出世して家が栄えるのであれば、東南に玄関をつくらない手はありませんよね。ですが、これも家相の代表的な迷信なのです。

もっとも、東南の玄関自体は、まったく悪いものではありません。
東南は光が溢れて明るく、玄関にも適した場所です。ただ、東南に玄関があることと、子供の出世や家の繁栄とには、本来直接的な因果関係があるわけではありません。
また、東南に玄関をつくったり、縁起がいいからと張り出した部分をつくってみたものの、家族に災いが起こり、思い悩んでいるという相談も、実際これまでにたくさん受けてきました。東南に玄関をつくったからといって、絶対に幸せになるという保証はないのです。

そして、先ほどもお話をしたように、東南の玄関は、ハウスサーカディアンの考えには反するものであると私は考えています。今まで何度もお話をしてきたように、体内時計を安定させるには、朝日を効率よく浴びることが有効です。
そして、そのために、できれば住まいの東南には、1階はダイニング、2階には寝室や子供室を設けていただきたいのです。出入りにしか使用しない玄関を東南に設けたら、せっかくの朝日の効用を十分には生かせないことでしょう。それは、とてももったいないことだと私は思うのです。
住まいづくりに、家相の迷信をむやみに取り入れることで、幸せになるどころか、かえって住まいの良さをなくしてしまう。このようなことは、東南の玄関に限らず多々あります。
迷信と理にかなうこと、昔の住まいと現代の住まいの違いを、きちんと見極めることが、現代の家相学には必要なのです。

今でも、田舎に行くと、母屋とは別棟でお風呂やトイレがある住まいがありますね。昔の住まいは、お風呂やトイレなどは母屋の外に設けられ、家相でも、それらの水回りは「宅外」のものとして語られていました。
ですから、鬼門がどうの、水回りの方角がどうのと細かいことも言えたのでしょう。
ですが、現代の住まいは、何もかもがひとつ屋根の下にあるのです。迷信や言い伝えに振り回されることなく、家族が健康に快適に暮らせる、本当の意味での家相の良い家をつくることが大切であり、そのために私は、「ハウスサーカディアン」の概念を推進する活動をさせていただいているのです。
ただ、東南の玄関についても、もしかしたら先人たちは、私と同じような考えを持っていたのではないかと思うことがあります。母屋の東南に玄関があり、朝、外に出て、東南にあるトイレや洗面所に向かうことで、体内時計を安定させようとしていたのかもしれない。
だから、先人たちは、東南の玄関を吉としたのかもしれないと。

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