
私たちが提唱する「ハウスサーカディアン(体内時計を安定させ、健康的に暮らせる住まいづくり)」では、「朝の目覚め方」を何より重要なポイントとして考えています。今までもお話をしてきたように、体内時計を安定させるためには、夜ぐっすりと眠ることがまず大切ですが、その眠りの質を左右するのが朝の目覚め方なのです。
第二話の「朝日がもたらすよい目覚め、よい眠り」でもお話ししていますが、朝はやっぱり、太陽の光を浴びて目覚めるのが一番です。朝日を浴びて、脳内にしっかりとセロトニンを分泌させておけば、それに伴い、眠りのホルモンであるメラトニンもまた、きちんと生成されるからです。理想をいえば、朝は太陽の光で目覚め、戸外で散歩や体操をして、朝日の差すダイニングで朝食をとる。毎朝こんなふうに過ごせたら、体内時計もしっかりと安定してくれるでしょう。

ですが、物事はなかなか理想どおりにはいきませんね。朝の目覚めが大事とわかっていても、すっきりと目覚められないことのほうが、みなさんも多いことでしょう。そこで今、私たちが推奨しているのが、「ハウスサーカディアン、目覚めの三種の神器」ともいうべき電動カーテン、電動シャッター、電動ブラインド。これらを設置し、朝タイマーで自動的に開くようにして、光を感じて目覚めるという方法です。
ここで、よい睡眠を得るための環境を、今一度確認してみましょう。睡眠に適した環境、それは、「静かであること、真っ暗であること、適度な温度、湿度」であることです。

そして、この環境を整えるためには、シャッターや雨戸、カーテンなどを利用すると有効ですね。シャッターや雨戸を閉めれば、外の物音がうるさく響くこともなく、室内を暗く静かにすることができますし、防犯上も安心ですね。またカーテンも、遮光性のあるものや、断熱効果の高い厚手のものを採用すれば、部屋を暗くしたり、温度や湿度を一定にするのにも適しています。
しかし、眠るのに適したこの環境は、朝目覚めるときには、逆に不向きな環境となってしまいます。みなさんにも、夜、雨戸を閉めて寝て、翌朝つい寝過してしまったという経験があることと思いますが、暗く静かな環境ゆえに、朝は目覚めにくくなってしまうのです。目覚まし時計で起きればよいように思いますが、以前お話をしたように、覚醒を促すホルモンであるセロトニンは、明るい光の刺激を受けて脳内に分泌されます。セロトニンの働きで、心身ともにしっかりと気持ちよく目覚めるためにも、朝の明るい光を浴びて目覚めたいものですね。
では、朝の目覚めのために、シャッターやカーテンを開け放して眠ればどうでしょう。
朝は日の光の刺激を受けることができますが、東や東南向きの部屋の場合、夏などは早朝からさんさんと差す光によって、十分な睡眠がとれなくなり、睡眠障害を起こすおそれもあります。睡眠の医師である兄によれば、朝の光を早く浴びすぎると、どんどん早起きになるそうで、お年寄りの早寝早起きには、そんなことも一因だそうです。人により就寝や起床の時間も違いますから、朝の光は、あくまでも適度な時間に浴びることが大事なのです。
このように、睡眠に適した環境と目覚めに適した環境は、その条件だけを考えれば、相対するものですね。シャッターやカーテンを閉めれば、暗く静かでよく眠れるが、朝は目覚めにくい。逆にシャッターやカーテンを開けて眠れば、早朝の光や外の物音などで、十分に眠れずに目覚めてしまう。
そんな状況に有効な手段として、照明の光で目覚めるという方法があります。数社の照明メーカーからも、タイマーを利用して、起床時刻の30分程前から徐々に部屋を明るくし、気持ちの良い目覚めを促すシステムが販売されています。

(タイマー照明の例)http://www.koizumi-lt.co.jp/product/jyutaku/bedroom.html
私の自宅でもタイマー照明を採用していますが、照明の光の明るさ(ルクス)は300ルクスから500ルクス程度で、強い覚醒を促すものではありません。それに対して自然の光は、直接差し込む窓辺では1万ルクスに近く、曇りや雨の日でも、窓辺で計れば1000ルクスから3,000ルクスの明るさはあるのです。
できれば、やはり自然の光で目覚めたいものですし、それがハウスサーカディアンの理念でもあります。そこで、兄と私が考えたのが、タイマー機能を持った電動シャッターや電動カーテン、電動ブラインドを住まいに取り入れることです。私たちはこれを、「サーカディアンシャッター」、「サーカディアンカーテン」、「サーカディアンブラインド」と名付け、ハウスサーカディアンの重要なアイテムとして、推奨していきたいと考えています。
電動のシャッターやカーテン、ブラインドは、今までにもメーカーから販売されており、中にはタイマー機能が付いたものもありますが、まだまだ限られています。また、これらを利用して有効に起床するというサーカディアンの概念は、今までにはありませんでした。
質のよい睡眠と目覚め、両方を得られる住まいづくりを考えた結果、タイマーを使って電動のシャッターやカーテン、ブラインドを開放し、朝の光で目覚めるという方法に考え至ったのです。兄の病院も私の自宅も、シャッターはすべて電動にしていますので、タイマーを使った気持ちの良い目覚め方について、さまざまな実験もしてきました。そして、私たちがみなさんに推奨したいのが、次のような目覚め方です。
通常、部屋には2箇所の窓を設けることが多いのですが、まずは、ベッドの枕部分から遠いところのシャッターやカーテンを、タイマーを使って、起床したい時刻の20~30分程度前から開放させてください。それほど大きな音ではありませんが、シャッターやカーテンが開く際、モーターや製品自体の作動音が多少しますので、その音で目が覚めてしまわないように、耳から遠い場所から開けてほしいのです。そして、起床したい時刻に合わせ、枕にもっとも近い窓のカーテンやシャッターを、タイマーで開放させてください。
マンションなどで、部屋に1箇所しか窓がない場合は、照明を併用するのもよいですね。まずは、タイマーで照明を点灯させて目覚めを促し、起床時刻に合わせてカーテンやブラインドを開放させるとよいでしょう。
こういった方法をとることで、睡眠時は、シャッターや厚手のカーテンでしっかりと光や音を遮り、質のよい眠りを得ることができ、また朝は、まぶたから自然光を感じ、脳に光の刺激を伝えて目覚めることができます。照明より遥かに高照度の自然の光をうまく取り入れ、気持ちよく目覚めることができれば、それはまた、質のよい睡眠を得ることにもつながります。これこそ、私たちが提唱する「ハウスサーカディアン」の住まいづくりなのです。

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